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  • 院長 山本

院内セミナーを行いました


 本日の午後は院内セミナーを行いました。

 製薬会社の学術担当の方にいらしていただき、ワクチンの関する内容で勉強しました。ワクチンには様々な製品がありますが、それぞれに特徴があります。それをよく理解したうえで、適切なワクチンを選択して接種する必要があります。

 現在の日本でどのようなワクチン接種が望ましいのか?という話題も出ました。

 実は、これに関しては何もガイドラインがありません。

 日本の動物にふさわしい、日本の状況にあったものは存在しないのです。

 「え?、ワクチンは3年に1回でいいという話を聞いたけど?」

 「ワクチンは毎年打たなくてもいいって言う獣医さんがいたんだけど」

という方がいらっしゃると思います。これは、WSAVA(世界小動物獣医学会)のワクチンガイドラインが根拠となっていると思われます。

 このガイドラインの基本概念として、

「すべての動物にコアワクチンを接種し、ノンコアワクチンについては必要な個体にのみ接種することにより、個々の動物へのワクチン接種回数を減らすことをめざす」

と明記されています。

 つまり、個々の動物へのワクチン接種回数を減らすためには、すべての動物にコアワクチンを接種しなければならないというのが、このガイドラインの大前提なのです。欧米をはじめとする先進国ではワクチン接種率は比較的高い傾向にあり、集団免疫を高めることで個々のワクチン接種が減らせるでしょうという考え方に基づいています。

 ワクチンとは、感染症にかかった人が、その後同じ病気にかかりにくくなるという原理を利用したもので、病原性を弱めた、もしくは無毒化した病原体を接種することで、感染症に対する抵抗力(免疫力)をつけるものです。そうすることで、感染症にかかりにくくなったり、重症化を防ぐことができるのです。これを「個人免疫」と呼びます。

 しかし、この抵抗力のつき方は個体差が大きく、抗体検査(抵抗力の目安)を実施してみると、動物の場合、3年以上持続する場合もありますが、なかには1年もたないケースもあるのです。

 では、抵抗力が1年もたないケースでは感染症にかかってしまうのでしょうか?

 これに答えるためには、「集団免疫」をよく理解しなければなりません。

 集団内で免疫を持つ割合が高ければ、感染症自体が流行しにくくなり、これが「集団免疫」と呼ばれます。集団免疫が十分であれば、前述の抵抗力が1年持たないケースでも感染症にかかるリスクが低くなるのです。個人免疫を集団免疫でカバーできるということですね(集団免疫の概念は決してワクチンだけの話ではありませんが、ここでは割愛します)。

 この考え方に基づけば、WSAVAのガイドラインに示されるように、個別のワクチンを極力減らしても感染症を適切に予防できることになります。

 「じゃあ、やっぱり3年に1回でいいんじゃない?」と、考えますよね。

 しかし・・・

 残念なことに、日本は欧米と比較してワクチン接種率が低い傾向にあり(正確には不明ですが、ワンちゃんで30%以下という話もあります)、すべての動物にコアワクチンを接種するというWSAVAのガイドラインの概念とはかけ離れた状況にあるのです。つまり、集団免疫はまったくといっていいほど機能していません。

 また、欧米と異なり、ペットの飼育に関してはペットショップで購入するケースが多く、ペットショップは一番感染リスクの高い時期の動物が次々と入れ替わる環境ですので、きわめて感染源が蔓延しやすい場所と言えます。そのような場所から、身近に動物がやってくる状況を考えると、ワクチンを打っていない、あるいは、ワクチンを打っていても抵抗力が低い動物は、いつ感染症にかかってもおかしくないというのが日本の状況なのです。

 ですから、単純にガイドラインに沿って「ワクチンは3年に1回で十分」というのは、個人的には大変疑問であり、とてもとても心配なのです。

 そもそも、このガイドラインは基本的な考え方ではあるものの、あらゆる地域でそのまま使用できるものではなく、また個々の生活環境や感染症への暴露リスクには差があるため、すべての個体に当てはまるワクチネーションプログラムを策定することは難しいとも記載されています。

 当院では以上のような考え方に基づき、特別なケース(ワクチンアレルギー、家から一歩も外に出ないなど)を除いて、現状では1年に1回の定期的なワクチン接種をお勧めしています。もし、毎年ワクチンを打ちたくないという場合には抗体検査を実施して感染症に対する抵抗力をチェックすることをお勧めします(抗体価がすべてではありませんが、他に指標がありません)。

 ワクチン接種に関して、不明な点やご心配な点がありましたらスタッフまでお問い合わせください。

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