「暖かくて心配だからフィラリア予防薬ちょうだい!」と、4月前半に来院されるケース
「もう気温も低いし、予防薬はいらないんじゃない?」と、11月前半で予防薬を与えることを止めてしまうケース
動物病院ではよく遭遇するケースですが、どちらも正しくありません。
フィラリア症は蚊によって媒介される寄生虫疾患であり、蚊は暖かければ冬場でもみかけることがありますね。では、1年を通してフィラリア感染予防をしなければいけないのか・・・ この問いに答えるためには、ある概念が重要となります。 それが、「HDU」です。
フィラリアは蚊の体内である程度まで成長しないとワンちゃんに感染することが出来ません。HDUはフィラリアを媒介する蚊の体内でフィラリア幼虫(ミクロフィラリア)が成熟するために必要な積算温度の単位のことで、このHDUを算出することによって、フィラリアが感染する期間を推定することができます。 参考ページ(http://filaria.jp/html/hdu/index.html)
本庄市周辺では、計算上15年間で最も早い感染日が5月7日、最も遅い日が11月4日とされています。 フィラリア感染症予防薬は蚊の刺咬によりワンちゃんの体内に侵入したフィラリア幼虫を皮下組織にいる間に駆虫する薬であるため、感染開始後に投与を始めて、感染終了後に投与を終える必要があります。 HDUはあくまで計算上の指標ですし、年々気温が高くなる傾向がありますので、完全に予防できる余裕をもった予防期間を設定する必要があります。このような理由から、当院では、犬フィラリア感染症の予防期間を5月中~11月末(12月初)と設定しています。
先ほどの、「フィラリア感染症を予防するためには1年を通して予防をしなければならないか?」の問いの答えとしては、「必要ない」というのが正解となります。
ただし、すでにフィラリアに感染してしまっているワンちゃんや、他の寄生虫(鞭虫をなどの腸内寄生虫)の感染リスクが高いワンちゃんについては通年で予防をお勧めするケースがあります。不明な点があればスタッフまで遠慮なくお問合せください! 本庄周辺は残念なことに、まだまだフィラリア感染症の多発地域です。予防は確実にしてあげてください。また、ネコちゃんも予防が重要ですから、まだ予防してないという場合にはお早めにご相談ください。