6月17日(日)、大宮のソニックシティで開催された日本獣医麻酔外科学会、日本獣医循環器学会、日本獣医画像診断学会、日本獣医内視鏡外科研究会の合同学会に参加しました。全国から多数の獣医師が集まる大きな学会です。
循環器を中心に聴講しましたが、普段あまり聞く機会のない人医療の「敗血症」の講演が印象に残りました。講師は千葉大学医学部の織田成人先生です。
敗血症は、2016年にヨーロッパと米国の集中治療学会の合同委員会において策定されたガイドラインにより「感染による制御不能な生体反応により生じた生命を脅かす臓器障害の状態」と定義されるようになりました(Sepsis-3)。
敗血症は進行してショック状態に陥ると致死率は25%にも及びます。ですから、早期に敗血症を診断して適切な治療を実施しなければなりませんが、そのために必要となるのが診断のための「定義」です。特に、人の医療では保険適応の点から、病気の診断治療のためには「定義」が非常に重要となるようです。
致死率が高い病態の場合には、「定義」が厳しくなると診断や治療が遅れ、救命率の低下につながってしまいます。逆に、「定義」が緩くなると過剰に診断されるようになり、不必要な治療が増加することにもなります。
過不足なく診断や治療が行えるようガイドラインは適宜改定されていますが、人の医療現場でも混乱を来すことも多々あるようです。
獣医療の場合には、人医療と比較して使用できる情報が少なく、病態も人医療ほど解明されていない部分が多大にあります。そのような現状において、敗血症のみならず、他の病態や疾患においても、人医療と同様のガイドラインを適応できるのかなど問題が山積みですが、日々発信される情報に対してアンテナを張り巡らせ、過不足なく適切な治療が行えるよう努力を続けていかなければならないと感じました。
学会で学んだことを日々の診療に役立てていきたいと思います。