5月16日(水)、診療終了後に前橋にある群馬夜間救急動物病院において開催されたセミナーに参加しました。
テーマは「胆嚢疾患の外科と麻酔管理」で、講師は川口市にある「どうぶつの総合病院」で外科と麻酔科で主任をつとめる浅川誠先生です。浅川先生は、米国獣医麻酔科専門医であり、さらに外科も専門としている麻酔外科のスペシャリストです。
セミナーでは、胆嚢の解剖学的な話から始まり、胆嚢疾患の病態生理、手術のポイント、そして重症例における麻酔管理について、興味深い話をたくさん聞くことができました。
胆嚢とは、肝臓の隣にある臓器で、肝臓で産生された消化液である「胆汁」を一時的に貯蔵し、成分を調整し、必要な時に消化管へと送り込む袋状の構造物です。
近年、ワンちゃんにおいて胆嚢疾患が増加傾向にあり、日常診療において遭遇する機会が増えています。胆嚢炎や胆石、胆嚢粘液嚢種といった疾患では外科手術が適応になることが多く、時には胆嚢破裂により緊急手術が必要になる場合もあります。
胆嚢疾患における緊急状態では、敗血症もふくめた全身性炎症反応症候群(SIRS)に陥っていることが多く、非常に麻酔リスクが高い状態での手術を行わなければなりません。
文献上、胆嚢破裂の場合の死亡率がおよそ50%と報告されており、それに細菌感染を伴っていた場合の死亡率は70%にも達します。
その死亡率を少しでも低下されるためには、術前の安定化、術中の適切な麻酔管理と手術手技、そして綿密な術後管理が必要です。今回のセミナーで学んだことが早速役立つと思います。
残念ながら破裂して緊急来院というケースは少なくありませんが、もちろん、破裂する事態に陥る前に対処することが理想的で、それが可能であれば生存率はかなり高い疾患です。
定期的な血液検査も有用な場合がありますが、胆嚢疾患単独では血液学的な変化がみられないことも多々あり、早期診断のためには何よりもエコー検査が重要です。
すべてのワンちゃんが罹患する可能性がある疾患ですが、特に、胆嚢疾患の好発犬種(ミニチュアシュナウザー、アメリカンコッカースパニエル、シェットランドシープドッグ、チワワ、ポメラニアンなど)、副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症などの基礎疾患、中齢~高齢といったファクターがリスク因子と考えらえれていますので、該当する場合には特に定期的なエコー検査をお勧めいたします。
詳しくは当院獣医師までご相談ください。