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  • 院長 山本

院内セミナーを行いました


本日の午後は院内セミナーを実施しました。

 テーマは「アレルギーの診療」。講師は日本の獣医アレルギー研究の第一人者である動物アレルギー検査株式会社(http://www.aacl.co.jp/index.html)の増田健一先生です。

 アトピー性皮膚炎は痒みを引き起こす特徴的な皮膚炎ですが、主に環境アレルゲン(花粉、カビ、ダニなど)に対するアレルギー反応の結果として起こります。

 同じような症状がでる皮膚病に食物アレルギーがありますが、これまで獣医領域ではアトピー性皮膚炎と食物アレルギーを詳細に鑑別することが困難でした。

 なぜでしょうか?

 それは、良い検査方法が確立されていなかったからです。

 今までもアレルギーの検査はありましたが、特に食物アレルギーに関しては正確に判断することができなかったのです。そこで、苦肉の策として除去食試験というものを行いますが、これが一筋縄ではいかないものなのです・・・

 除去食というのは、アレルギーを起こしにくい原料(新奇タンパク、加水分解タンパク等)を使用したフードですが、そのフードがアレルギーを起こすこともあるため注意が必要です。また、主原料が大丈夫でも、その他の成分(特に大豆油など)が合わないことも多々経験されます。

 また、決まったフードと水のみで厳密に4~8週間生活することが非常に難しく、こっそりご家族がおやつをあげてしまうケースや、お子さんがこぼした食べ物の拾い食いなどで容易に検査は失敗に終わってしまうのです。

 そして、長く辛い除去食試験を終えても改善がなければ、また他の除去食を使用した試験の始まりとなります・・・(もちろん、うまくいくケースもあります。除去食試験は実際に食べて実際の症状をみる確実な検査ではありますので、試験をしっかり乗り越えられる場合には大変有用です)

 そこで、今回のセミナーでも詳細に学んだアレルギー検査が役に立つのです!

 「リンパ球反応検査」という画期的な検査が登場したおかげで、従来の検査で検出することが出来なかった食物アレルギーを診断できるようになったのです。しかも、日本で生まれた検査で、現在は日本でしか行うことが出来ません。世界でこの検査の恩恵を受けられるのは日本のワンちゃんだけなのです(来年からアメリカでも検査が出来るようになるみたいです)。

 検査方法は、いたって簡単で採血だけです。動物・ご家族ともに負担が少なく、しっかり原因を追究することが出来ますので、食物アレルギーを強く疑うケースではこの検査をお勧めしていきたいと思います。

 食物アレルギーを強く疑うポイントは・・・・

 1.1歳未満の発症(小さい時から体をよく舐めていたなど)

 2.一年中痒い(環境アレルゲンが原因であれば冬場は症状がよくなります)

 3.顔、背中、肛門周りが痒い

 4.1日に3回以上排便をする

 上記のような症状が当てはまれば食物アレルギーの疑いがありますので、獣医師までご相談ください。

 環境アレルゲンによる痒みが疑われるケースでは、「アレルゲン特異的IgE検査」が非常に有用であり、これは従来のIgE検査と大きく異なり、IgEの量の比較ができます。つまり、一番悪い影響を及ぼしているアレルゲンを推定することが出来るのです。これにより、アトピー性皮膚炎のワンちゃんで原因となるものを避けることが出来る場合があります。また、花粉が原因アレルゲンのワンちゃんでは、花粉の飛散前から対処することが可能となり症状を軽く済ませることもできるようになります。

 さらに、検査を実施することで、特定のダニの抗原に強く反応することがわかれば、次世代減感作療法(アレルミューン)にも繋げることが可能です。

 人と同様、アレルギーのワンちゃんは増加の一途をたどっています。残念ながらアレルギーを根治する治療法は現時点ではありませんが、様々な方法で症状を緩和することが可能です。

 最近では、非常に良い痒み止めのお薬も登場しました。従来から使用されている副腎皮質ホルモン剤や、抗ヒスタミン剤も必要ですし、二次感染を抑える抗菌薬も使うことは多々あります。しかし、長期に渡って上手に付き合っていかなければならないのがアレルギーですから、あまりお薬に頼りすぎるのは好ましくないと考えます。

 上記のような検査を適切に実施することで、原因をしっかり突き止め原因アレルゲンを極力回避する(適切な食事の選択)、必要な時期に必要最低限のお薬を使用する、原因によって体質を改善する減感作療法を実施することが可能となります。

 今回のセミナーで学んだことを今後の診療に役立てていきたいと思います。

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