上野で開催された学術セミナーに参加しました。Hyper Joint Seminar 主催の消化器外科ガイドラインシリーズ、今回のテーマは「腸の疾患」です。
動物病院で実施される腸の手術の原因としてとても多いのが、「異物誤食(消化できない物を飲み込んでしまうこと)」です。飲み込まれた異物は、その形状や材質によって腸内で詰まったり腸を裂いてしまったりと、命に関わる事態を招くことがあります。
このため、消化管内に異物があると判明した時点で緊急手術が検討されます。(腸を切開せずに薬で吐かせる処置・全身麻酔下での内視鏡処置で異物が摘出できることもあります。)
腸の手術方法とは少し話がそれてしまいますが、「異物誤食」についてご紹介したいと思います。
保険会社のアニコム損保が2012年に実施した異物誤食に関する調査によると、誤食事故を経験した飼い主様のうち、1回のみの方が65%、2回経験した方が14%、3回経験した方が18%でした。すなわち、「誤食経験のある飼い主様の約30%が、誤食を再度起こしてしまった」と考えられます。
そして2回目以降の誤食のうち、75%は「飼い主様が一緒にいるときに発生してしまった」ことも報告されています。一瞬目を話した隙に誤食してしまったり、飼い主様の目の前で誤食したりするケースが多いそうです。そして、誤食事故の約8割が「家の中」で起こるそうです。
「うちの子、たべちゃいけないものを飲み込みそうだったの!」という、ヒヤリとした経験が1度でもある方はご注意ください。今後また同じようなことが発生し、最悪の場合命に関わる重篤な事態を招きかねません。
アニコムが2012年に飼い主様向け資料として作成した、「STOP異物誤飲プロジェクト」というサイトに、どうしたら誤食事故を防げるかの対策がまとめられています。もしよろしければ、今後の事故防止に一度ご参考ください。
http://www.anicom.co.jp/stopgoin/pdf/130627.pdf
今回のセミナーでは、異物誤飲に対する外科手技についても詳細にご講演いただきました。明日以降の診療・手術に役立てていきたいとは思いますが、異物はやはり、誤食させないのが一番です。
どうかご自宅でも、再度「異物誤食」対策をご確認ください。