
3月22日、入間にて開催された学術セミナーに参加しました。講師は米国獣医病理学専門医であり、ノーバウンダリーズ動物病理を運営されております、三井一鬼先生です。
テーマは「死後検査について」です。
死後検査とは、ワンちゃんネコちゃんが亡くなられた際にその死因を調べるために行う検査のことです。検査方法の多くは、胸部や腹部を手術する時のように切開し病巣部を見つける「剖検」という手技が実施されます。
愛する我が子を失った、その激しい悲しみと喪失感の最中に、原因を探るため安眠した我が子にメスを入れる・・・
なかなか、すべての飼い主様が選択できる事ではないと思います。しかし、死後検査を実施することは、「かわいそうなこと」ではなく、むしろ、死因をご説明ができるようになることで、飼い主様のお力になれるケースも少なくないと私は思っています。
少し長くなりますが、私(川口)が以前実施した死後検査の体験談をお話しします。
以前勤務していた別の動物病院で、飼い主様のご希望から死後検査を実施させていただいたことがあります。個人情報なので詳細は伏せさせていただきますが、全身の血管内に血栓ができてしまう病気(DIC)が急に発生し、専門病院をご紹介したものの、原因が確定されないまま急逝してしまったネコちゃんがいました。
亡くなった直後に飼い主様から「どういう原因だったのか、今一度調べられないでしょうか」と相談をいただき、私が死後検査を実施させていただきました。
実施した検査は「コスメティック検査」という手技です。検査後、どこにメスをいれたのかわからないように工夫し、ご遺体をできる限り綺麗な状態に保って飼い主様にお返しする方法です。
結果として、悪性の腫瘍(がん)が見つかりました。
血栓の原因は腫瘍であった旨をご報告しましたところ、飼い主様からは「死因がわかるまでは、飼い主である自分たちの不手際のせいで急変はさせてしまったのではないか?と悩んでいたが、亡くなった原因がわかったことで、とても心が楽になりました。」と、おっしゃっていただきました。
すべてのワンちゃん、ネコちゃん、そのご家族に、死後の検査が適切であるというわけではありません。ただ、今回ご紹介したようなケースのように「なぜこの子がなくなったのか?もっとなにかできたのではないか?」という飼い主様の苦しみを、死後検査をすることで緩和することができるのではないか?と私は考えております。
長文になりましたが、死後検査は、飼い主様、亡くなったワンちゃんやネコちゃんに大きく貢献できる検査です。
皆様に積極的にお勧めする場面は少ないとは思いますが、もし、また死後検査のご依頼をいただいた際には、今回のセミナーを通じて得た知識をもとに、より精度の高い検査ができるよう努めてまいりたいと思います。