横浜で開催された、日本獣医内科学アカデミー学術大会(JCVIM2016)に参加いたしました。複数の獣医学術団体が集まるこのJCVIM年次大会は、国内最大規模の学会のひとつです。 このような大きな学会では、複数の講演・教育レクチャーが行われます。今回、そのなかでも一番印象的だった「犬の胆泥」というテーマについて、ご紹介したいと思います。 そもそも「胆泥」とはなんでしょうか? 胆泥症とは、肝臓からの分泌された液体(胆汁)が泥状になって胆嚢内に溜まることです。超音波による画像診断で確認することができ、ワンちゃんでは比較的よくみられます。 昔はワンちゃんに胆泥が見つかっても、「病気ではない」と言われていました。これは、1998年に報告されたBromelの「犬には胆泥があっても、それがどんな量であっても病気ではない」という考察に基づくものでした。 しかし、その後、胆泥に可動性がない時は、胆嚢の細菌感染・胆嚢炎の可能性ある(Lawrence YA,2015)、また、胆嚢内にゼリー状物が溜まっていると(胆嚢粘液嚢腫)、胆嚢破裂を起こして急変する可能性があることが示唆されました(Crews U,2009)。 胆泥には、放っておくとまずいものがあるのではないか?と、考えられるようになったのです。 胆嚢疾患は内科的に経過観察ができることもありますが、治療への反応が乏しい場合には胆嚢破裂・腹膜炎を発症し急変するリスクを伴います。 手遅れにならないために「手術に踏み切るタイミング」を常に留意する必要があります。このタイミングを見誤らないためには、胆嚢異常の早期発見と定期的なモニタリングが欠かせません。当院では、年1回~2回の健康診断をおすすめしています。愛犬の健康を守るためにぜひご検討ください! 今回、内科学アカデミーの講義において「胆泥症」に関して詳細に学ばせていただきました。明日以降の胆嚢疾患における診察・治療に活かしていきたいと思います。 ※胆嚢疾患について、本投稿内では説明しきれない内容もあります。胆泥・胆嚢疾患について、ご心配なことがあれば、お気軽に当院獣医師までご質問ください。